歯が1本になった患者さんは
今から約25年前の話です。ある70代の男性が来院されました。
私は先生から、次回型どりをするから「スケーリングしておいて」と頼まれました。
入歯を作るための型取りの準備です。
お口を開けていただくと下の犬歯が1本だけありました。
上の歯は1本も無く、下に犬歯が1本、歯垢と歯石で飾られていました。
歯ぐきは赤く腫れてブヨブヨとしています。
私はただ歯石を取るということができなくて、いつものようにハブラシを持ってきて、この方に歯の磨き方を教えたのでした。。。
初めて歯を磨いたのかと思うほどぎこちない手つきだったんですが、何とか磨き方をマスターされました。
そして、歯石を取り、ポリッシングブラシとラバーカップでツルツルに磨いてその日は終了しました。
数日後、無事に入れ歯もできあがりました。
入れ歯のチェックなどを行うため度々来院されるようになりました。
その度にお口の中を拝見させていただきますと、その1本の歯はいつもとても良く磨きあげられていてピカピカです。
とても嬉しそうに私に歯を見せてくれます。
歯ぐきもピンク色でとても若々しくきれいになってきました。
さらに歯周病での揺れもピタッとおさまり、その1本の歯は立派にすくっと立っているんですね。
この方にとってこの1本の歯はとてもとても大切なもののようでした。
確かに自分の歯が何本かでもありますと入れ歯の安定に大いに役立つんです。
さらに根の周りには歯根膜という、噛みごたえを感知する組織が残されているので、食べ物を噛んだときの、それぞれもつ食感を多少なりとも感じることができるんですね。
そして何よりも自分の歯があるという、その尊厳が保たれているのではと想いました。
どうせ年だからとか、もう歯が残り少ないからといって、あきらめるのでなく、たとえ1本になってもその歯を守り抜きたいという気持ち。
その気持ちを大切にしていきたいと思うんです。
しかしながら、あと10年いえ20年早くお逢いできていたらと思わずにはいられませんでしたね。
→知っているようで、よく知らない歯周病をご覧ください。
« 大人の虫歯が増えている! | トップページ | インプラントを長持ちさせる方法! »
「7.歯科コラム」カテゴリの記事
- 新型コロナに感染してしまいました。(2023.09.18)
- 「あなた、歯周病ですよ」(2022.09.30)
- コロナワクチン接種後の抜歯には注意!(2022.03.07)
- 『得する医療費』治療費を減らすための予防歯科(2020.10.28)
歯のことを色々と検索していましたらyumiさんのブログに出会いました。
ホント!!、歯は大事ですよね!!!
子供の時、虫歯だらでて、もう殆どの歯が神経ないです。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
折れて抜歯した歯もあり、残りの歯も折れないように大切に使っていきたいです。
歯周病で根の見える歯もあり、これから先の事を考えると暗い気持ちになります。
ホームケアと歯医者さんのメンテナンスでこれから先、少しでも自分の歯を失わないようにしたいと願っていますが、色んなことがあり、今歯医者ジプシーになってしまいました。
早く、いい歯医者さんにめぐり会いたいです。
投稿: いちご | 2015年9月 8日 (火) 23時07分
いちごさんコメントありがとうございます。
私も子供の頃チョコレートが大好きで(今もですけど(*^-^))虫歯を沢山作り、歯医者さんへはよく通っていました。
しかし、予防のお話をしてくれる歯医者さんにめぐり合うことは一度もありませんでした。(。><。)
正しい歯の磨き方など予防のレクチャーやメインテナンスをきちんと受けていたら、こんな詰め物や被せ物だらけにはならなかったんだろうな~と後悔しています。
「歯医者ジプシー」になる方はとても多いですね。
(歯周病難民よりネーミングが上手いです。)
しかしながらいい歯医者さんってなかなか見つけづらいんですよね。
いちごさんがいい先生や歯科衛生士にめぐり合い、今ある歯を大切にしていかれることをお祈りしています。
投稿: Yumi | 2015年9月12日 (土) 18時35分