歯科衛生士になって
高校時代、進路を決める際に私は芸術大学に行きたいと思っていました。それは、芸術に対する憧れみたいなものが大半を占め、特に具体的な目標を伴うものではありませんでした。
そんなある日、母が私に新聞の切り抜きを見せて、
母「あなた、歯科衛生士になりなさいよ。国家資格で、しかも女性しか取れない資格だから…。美大になんか行ったってしょうがないでしょ」
私「え〜、人の口の中なんか触りたくな〜い、美大がいい~」とは言ったものの、
母「いや、絶対に歯科衛生士がいい!」と本気ですすめてくるので、私もだんだんとその気になり…
とうとう横須賀にある神奈川歯科大学付属の日本女子衛生短期大学という歯科衛生士のための短大に行くことになりました。今から約30年前の話です。
でも、今思うと芸術的センスのイマイチな私には、歯科衛生士という職業の方がピタリと合っていたんです。歯科衛生士になって良かったことは…
- 困っている人の力になりたいという希望をかなえられること。
- 健康にはとても感心があり、口腔の健康を学べたことは、何よりも変えがたい収穫であったこと。
- 日々の臨床で、いろいろな方との出会いがあり、学ぶことがたくさんあること。
などです。今では歯科衛生士を薦めてくれた母にとても感謝していますよ。
初めて勤めた歯科医院は、とても良い環境でした。ユニット(治療台)が30台くらいある大きな歯科医院です。
そこには「予防歯科」というブースがありました。歯科衛生士が患者さんと一対一で予防のお話や歯周治療を行うスペースです。(今から30年近く前なので、かなり進歩的な歯科医院でした。ちなみに今も三田にあります)
そこで3年間、いろいろな患者さんを担当させていただきました。
その中で一番印象に残っているのは、他県からわざわざ来院された女性です。
20代後半で、和裁をお仕事にされていたその方は、重度の歯周病でした。歯自体は、全て揃っており、虫歯の治療もほとんどされていない健康できれいな歯なんです。
しかし、歯を支える周りの骨が減ってしまっていて、前歯は少し前に飛び出していました。(歯周病で歯を支える骨の量が減り、前歯を舌で裏側から押す癖があると、歯は前に移動してしまうのです。また、奥歯のかみ合わせが低く、前歯のかみ合わせに負担がかかってしまい前歯が出てしまうこともあります。フレアーアウトといいます)
歯のぐらつきを感じた患者さんは、はじめに家の近くの歯科医院に行かれました。そして、先生に言われたことばは「全て抜いて総入れ歯になります」でした。とてもショックを受けた患者さんは、どこで調べたか当時私が務めていた歯科医院に来院されたのです。
私はその方の担当になりました。お口全体のレントゲン写真を見てもかなり進行した歯周病でした。これは若年性歯周炎といって、通常の歯周病とは少し違って、いったん発症すると進行がとても速い歯周炎です。
今だと抗菌療法という抗菌剤を併用した改善法もあるのですが、その当時は基本の歯周病の初期治療を本当に丁寧に、頑張って行いました。
まずは患者さん本人に歯みがきを頑張ってもらいました。さらに私自身の役目として、歯周ポケットの中の環境を良くすることに努めました。こうして患者さんと協力して取り組んだ結果、歯周病の進行はストップしました。歯の揺れもなんとかおさまり、安定させることができたのです。そして一本の歯も抜かずに、全て保存させることに成功しました。
初期治療が終了し、歯を残せたことで、患者さんが涙を浮かべて喜んでくれたことが何よりも嬉しかったです。歯科衛生士ってなんてやりがいのある仕事だろう✨と思った瞬間でした。今どうしてらっしゃるだろうか、その後の歯はどうなったかしらと、たまにふと思い出します。
歯科医院に来院されて、はじめはみなさんお口の中に火がついている状態です。ほとんどの歯科医院では、火がついたまま、壊れたところの修理をしています。 なのですぐにまた壊れ、もとの状態に戻ってしまうんです。せっかく高額なかぶせものを入れても、すぐにまた虫歯になったり、歯周病になったり…
歯科衛生士は、まずその火を消す大切な役目を担っていると思うのです。
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