素敵な歯科医師 Part1
私が初めて勤めた歯科医院では、診療後に先生方やスタッフ皆で勉強会をよく行っていました。
その時々の症例や自分で調べたことなどを発表し合います。
「根分岐部病変」というテーマを選んで発表したときのこと。
資料作成にあたって手にしたのが、当時世界で最も優れた歯周病科の教授、スウェーデンのヤン・リンデ先生の本でした。
厚さ5~6cmある学術書でしたが、非常に興味深く一気に読んだ記憶があります。
リンデ先生の本を読んで、膨大な広がりを持つ歯周病学という学問に心惹かれたというか…
初めて勉強することが楽しくなった体験でした
日本にも素敵な先生はたくさんいらっしゃいます。
学会でお話を拝聴した谷口威夫先生。日本臨床歯周病学会の理事長をされていた方です。
長野県で開業され40年間、一般歯科の中で歯周病治療にとても力を入れて診療にあたられている素晴らしい先生です。
先生が力をいれてらっしゃること、
- なるべく外科処置を行わなくてすむように、一本一本の歯を大事に思い、丁寧に処置すること。
- 歯周病を改善するための、歯みがきを徹底してもらうこと。
- 歯に悪い食べ物や飲み物はひかえてもらうこと。
- 歯周病の征服は根分岐部病変を征服することだと考え、根分岐部病変を予防すること。
これらのことは全てあたりまえのことのようですが、やはり見えている部分に重きを置いている先生の方が多いのが現実ですね。
見えていない部分をきちんと考えている先生は本当に少ない…
なぜなのでしょうね??
予防歯科の第一人者として有名な、アクセルソン先生。 スウェーデンのイェテボリ大学歯周病学教室にて、先述のリンデ教授に師事されていました。
今から25年前、初めて来日された時の講演会での第一声、
「あなたの指が3分の1失われたとします。その失われた部分を金属で埋めるとしたら、あなたはそれを良しとしますか? そういう方がいるならば、手を挙げてください!!」
…もちろん誰ひとりとして手を挙げる人はいません。
「じゃあ、なぜ歯だけは良しとするのか? 歯には異物を入れておかしいと思わないのですか!?」
…講演会は熱気ムンムンのまま幕を閉じ、壇上から降りるアクセルソン教授には拍手が鳴りやまなかったそうです。
私もこの先生のお話を10代のときに聴いていたら…
きちんと歯の磨き方を教えてくれる歯科医院に通っていたら…
人工物がたくさん入っている自分の口の中を見ては後悔しきりです。
スウェーデンは予防歯科の先進国であり、歯科医院へ行くのはメインテナンスのためという人がほとんどです。
日本はというと、メインテナンスを受けに歯科医院へ行く人は全体の2%。ほとんどの人は、痛くなってから仕方なく行くのです。
日本はいつになったら予防歯科の先進国に仲間入りができるのでしょうか?
スウェーデンデンタルセンターという素敵な名前の歯科医院で診療をされている弘岡秀明先生。弘岡先生もリンデ教授の元で歯周病学を学ばれました。
(スウェーデンデンタルセンターへ見学に伺ったときには、素敵なレストランへランチに連れて行ってくださり、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。弘岡先生、有難うございました!)
先生の講演会でおっしゃっていました。
「今は、どこの歯科医院でもインプラント治療をしている。全然磨けていない患者さんにも、平気で植えまくっている。そんな歯医者には行って爆弾を投げこんでやろうと思う」
…私は心の中で拍手を送っていました
コントロールされていない歯周病の方にインプラントを入れるなんて論外です。でも、ろくでもない先生は平気でインプラントを入れているそうなのです。
→「インプラントのメインテナンス」もご覧ください。
どこかのとある先生がこう言ったそうです。
「歯周病なんか治したら、やることなくなっちゃうじゃん」
エッ....!!
初めこれを聞いたとき、とても腹が立ったと同時にとても悲しくなりました。でも、このことがブログを書こうと思ったきっかけにもなったような気がします。
幸い私の直接知っている先生にはこんなことを言う人はいませんが。
「ヒポクラテスの誓い」にあります。
自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。
患者に利すると思う治療法。それは…
いつまでも自分の歯を使えるように手助けをする
これがいちばん患者さんのためになるのだと思うのです。
皆さんも素敵な先生をご存知でしたら是非おしえてくださいね
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