オーバーブラッシング:大事な歯磨きの力加減の話(その2)
歯を磨く際、力を入れすぎてしまう方は大勢います。
とにかく硬めのハブラシを好み、歯に押し付けるようにしてゴシゴシと磨かれるのです。
皆さん一様に「力を入れないと磨いた気がしない。」と言われます。
特にまじめで綺麗好きな方に多いように思われます。
そのような磨き方を続けていると歯肉退縮といって、歯ぐきが下がり歯根部分が出てきてしまう。
ハブラシ圧が強すぎると歯ぐきに傷を作り、出血したり痛みがでることもあります。
気づかぬうちに症状は進み、とても磨きづらい複雑な歯ぐき形態になってしまいます。
これを歯科ではオーバーブラッシングといいます。
↑歯ぐきが下がってしまい、歯根が出ている様子
歯と歯ぐきと歯を支える骨の関係は、解剖学的、生物学的に一定の距離を保ちます。
(生物学的幅径…Biologic width)
→前歯―差し歯をご覧ください。
歯ぐきが下がると、それに伴い歯を支える骨も下がってしまうことになります。すなわち磨きすぎで歯ぐきが下がるのは、骨が下がることにつながるのですね。
歯を支える骨が下がるというのは歯周病の症状の一つですよ。
オーバーブラッシングで下がった場合、細菌感染は無いため歯みがきで血が出る、膿が出るなどの歯周病特有の不快な症状は起こりません。(傷での出血はあり、ピリッとした痛みなどはある。)
自分の奥歯を鏡でまじまじと見る人は少ないので、歯ぐきが下がっているのも全く知らないでいるというケースがほとんどです。
奥歯では頬っぺた側の歯ぐきが5mm以上も下がり、歯根の股の部分が出てきてしまっている人も多く見かけます。
歯周病でもないのに根分岐部病変の状態を作ってしまっているのですね。
→根分岐部病変の話をご覧ください。
一度下がってしまった歯ぐきは年数が経っていればもう元には戻らないので本当にもったいないことです。
日本人は、特に女性は歯ぐきや顎の骨が薄い人が多いので、ハブラシ圧が強すぎると歯ぐきが退縮しやすいので注意していただきたいです。
根面被覆術といって外科手術により別の部位(主に上あご)の組織を摂って移植する方法もあるのですが、保険外治療であり、それなりに高度な治療なので費用もかかります。
骨が下がってしまった理由は、以前の歯周病の痕のこともあります。
歯ぎしりや食いしばり、咬合性外傷、オーバーブラッシングによるものが合わさってのことかもしれません。
歯周病の原因は大概1つではないので、これらが一緒になると骨吸収もより進んでいくと思われます。
歯肉退縮をもたらすオーバーブラッシングは、早めの歯ぐきのチェックとハブラシ圧の確認が必要です。
クリーニング希望で来院されるか、治療の際その前後に、歯ぐきの下がり具合をチェックしてもらい、ハブラシ圧も確認してもらうといいと思いますよ。
→大事な、歯みがきの力加減の話 をご覧ください。
忙しい歯医者さんなどは、ただ「しっかり磨いてください。」などと言うだけの場合もあります。
しっかり=強くと勘違いされて磨かれている方もいますので、指導する方も注意が必要ですね。歯科医が言う「しっかり」は、強くではなく「丁寧に」と言う意味なのです。
すでに歯ぐきが下がってしまった方は、ブラッシングの際はバス法などハブラシの毛先を歯ぐきの方へ向けるのではなく、垂直に当てるスクラッビング法、又はローリング法、又は1歯づつの縦磨きなどで力加減はやさしくを心がけます。 左:スクラッビング法 | 中:バス法 | 右:ローリング法
歯間ブラシも速いスピードで動かすのでなく、ゆっくり丁寧に動かしてください。
歯ぐきは下がってしまってからでは遅いので、健康な歯ぐきのうちに適度な力加減で磨くということを身につけておくのがなによりです。
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