ルートトランクってなあに?
大臼歯は歯根(ルート)が2根あるいは3根あります。(その分岐した股の部分を根分岐部といいます →「奥歯のだいじな話」)
トランクは幹・胴体・主要部分という意味です。ルートトランクとは歯根の胴体、股から上の歯根部分をさします。
模型の白い部分(歯冠)がエナメル質:Enamel
ベージュの部分(歯根)がセメント質:Cementum
その接合点:Junction
CEJ=セメント・エナメルジャンクション(セメント・エナメル境とも)
ルートトランクは正確にいうと、このCEJから分岐部までの部分です。
ルートトランクが短いか長いかで、根分岐部病変になりやすいかなりにくいかが分かれるんです。また、根分岐部病変になってしまったときに、対処しやすいかどうかも分かれるんですよ。
ではまず、ルートトランクが短い場合はどうでしょうか?(上のイラストでは右の股上の浅いタイプです)
歯周病でなければ特に問題はないのですが、いったん歯周病で歯槽骨が吸収する(歯根の周りのあごの骨が溶ける)と、根分岐部病変になりやすいのです。 例えば、3mmの歯周ポケットでも、ルートトランクが短ければ、早い段階で炎症が根分岐部まで及んでしまうということなんです。
ただし、歯周外科処置(歯根切除やトンネリングなど)を施すのには、ルートトランクが短いほうが行いやすいということもあります。また、場所的に歯間ブラシなどでセルフクリーニングがしやすいというメリットもあります。
歯周病でなくても、この分岐部近くに虫歯ができてしまい、分岐部病変に移行してしまう… なんてケースもあるんですよ。
さて、ルートトランクが長い場合はどうでしょうか?(上のイラストでは左のタイプです)
歯周病で歯槽骨が吸収しても、根分岐部が露出しにくい。 よって、根分岐部病変の発症は遅い。ということになるんですね。
しかし、いったん発症すると、外科処置等もしづらく、歯槽骨もすでにかなり下がってしまっているので、そうなった場合の予後は悪いといわれています。 抜歯となるケースが多いということですね。
ルートトランクの平均長は、上の奥歯では約4~6mm、下の奥歯では3~5mmとされています。 奥歯のルートトランクは、レントゲン写真を見ると、分岐部の位置でだいたいの予測ができるのでチェックしてみてください。
また、歯周病で既に歯ぐきが下がっている方は、鏡で直接見ることができるかもしれません。確認してみてくださいね。
こんなことも、歯を守るポイントとして、知っているのと知らないのとではまたちょっと差が出るのではないでしょうか?
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