始めよう包括的歯科治療
2019年8月25日、日本臨床歯周病学会の関東支部教育研修会に出席しました。
出席者の9割がドクターで衛生士はごく僅か。始まるまでは少々不安でしたが、出席して良かったと思えた研修会でした。
テーマは「始めよう包括的歯周治療 〜理想的なゴールへ向けて〜」
歯科における包括的治療とは、それぞれの専門性のある分野(歯周治療・咬合治療・矯正治療・審美修復・インプラント治療など)を別々に考えるのではなく、総合的に捉えていく治療であるということです。
印象に残ったのは40代の女性の症例。
20代から部分部分で歯科治療を受けてきた。
4〜5年前から口が開きづらくなる。噛み合わせが悪く、顎が痛くなる(マウスピースをすると一時的に楽にはなる)
ある朝、突然耳が聞こえづらくなる。咬筋が張ってきてパンパンに。ついに奥歯で物がかめなくなり…
この女性に対して、崩壊に至った「物語」を考え、噛み合わせ・顎の位置・歯周組織・インプラント位置を配慮した、包括的な治療が施されました。
治療後、すべての症状が改善され、微笑む女性の写真が印象的でした。
他にもこんな例があります。
歯科へ行き、奥から2番目の歯が痛いと訴えると、そこが当たらないように削ってくれる。しばらくすると、今度はその後ろの歯が痛くなる。そうするとまた削られる。
それにより顎の位置がずれ、耳鳴りが起こり突発性難聴になってしまう。
突発性難聴の原因が歯科治療かもしれないとは!
人のからだを部分部分で見てはいけない。なぜそうなったのかを全体として診ることが大切なのですね。
福岡伸一先生の「動的平衡」とも通じる話ですね
(動画の14分頃~)
また、こんな話もありました。
何年もある症状に苦しみ様々な病院を訪れるも原因がわからず…
名ドクターに包括的に診てもらったとたんに改善策が見つかり、治癒へと向かった。
問題意識を持って診療にあたられている医師に治療をしてもらわないと、なかなか改善しなかったり病状が進行したりしてしまう。
その時点で訴えのある所の治療を優先させるのは当然だけれど、現在の状態を見るだけでなく、過去そして未来をも見つめる包括的な視点をもって治療にあたることが大切。そんなことを改めて感じさせていただきました。
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